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代表的な呼吸器病

間質性肺炎 ⇨ 細菌性肺炎 ⇨ 肺癌 ⇨ 肺真菌症 ⇨ 非結核性抗酸菌症| 
慢性閉塞性肺疾患| ⇨ 喘息

間質性肺炎

肺は肺胞という小さな袋がたくさん集まってできています。間質性肺炎はこの肺胞の壁の正常構造が壊れて肺が硬くなる病気です。肺胞の壁を通して人は酸素を取り込んでいますが、この壁が固く厚くなるために酸素を取り込みづらくなり、息切れや呼吸困難といった症状を引き起こします。肺炎という名前はつきますが、細菌感染などによっておこる一般的な「肺炎」とは別の病気です。
間質性肺炎の原因はさまざまで、膠原病、じん肺、放射線、アレルギー性のものなどがありますが、原因不明のものも多くあります。
診断が難しいこともある病気ですが、当院では高分解能CT、気管支鏡検査などにより間質性肺炎の早期発見、早期診断につとめています。また間質性肺炎の病態は非常に多様であり、患者それぞれの病態に応じて適切な治療方針を検討しています。


細菌性肺炎

肺炎は風邪からでもなり得るありふれた疾患ですが、日本人の死亡原因として上位に挙げられており、致命的となることもあります。特に体の弱った患者さんでは気管支炎から悪化し広範囲に広がり重症化します。肺炎の死亡率は特に高齢者で高く、75歳を過ぎるとさらに増加します。細菌性肺炎において、原因菌の決定と治療薬の判断に培養を行いますが、早急な治療のために菌を同定せずに治療を開始することもあります。症状は、せきやたん、発熱、倦怠感、食欲不振、胸痛等も起こりえます。特に老人では肺炎の症状が軽いことがあり、食欲低下、不活発、会話をしないなどの「いつもと様子が違う」といった症状も肺炎を疑う症状としてありえます。 当院においては、レントゲン、CT、血液検査、たん培養などの検査と専門医師の診察により、十分な診断と治療が可能です。心配な方は内科外来を受診下さい。


肺癌

肺癌は近年増加傾向にあります。2010年には死亡者約7万人で癌死亡原因の男性での第一位となっています。

肺癌の診断
胸部x線での健診などで指摘される場合もありますが、早期診断はきわめて困難です。胸部x線検査が全肺の6割程度しか判読できないこと、肺が血流に富む臓器であることから原発巣が微細な場合でも早期に転移する場合があることなどです。 また、症状が早期の場合はほとんど無いことからも発見が遅れる原因です。進行の速度も種々の場合があり、CTなどの精査をどれくらいの間隔で実施するかも決めにくく、疑わしい陰影をフォローしているうちに進行する場合も多々あります。 特に中年以降は、胸部x線での異常を指摘された場合や、咳や痰の継続、胸痛など胸部の症状がある場合は、受診をお勧めします。

当院では、健診や他の疾患などで胸部X線で異常を指摘された場合、積極的にCTを実施し、早期の治療に結びつける努力を実施しています。また、喀痰中の細胞の検査、腫瘍マーカーなども検討します。 さらに、疑わしい場合は気管支ファイバー検査を実施じ、直接病変から組織を採取して確定診断に結びつける様につとめています。

肺癌の原因
喫煙がもっとも原因因子のなかで高いと考えられています。そのほかに、粉塵やアスベスト、有毒ガスの吸入歴、職業的有毒物の暴露、膠原病や間質性肺炎の存在、大気汚染なども関連しています。

肺癌の治療
肺癌の病理学的タイプや遺伝子異常の検査を組織検査で確定したのち、病変の進展を決定するため、全身の検査を実施します。脳転移や骨転移などは予後に大きな影響を与えます。

転移の有無や広がりで進行度が決まると、手術、放射線、抗癌剤での治療方針を決めます。病変が限局して手術が可能な場合は呼吸器外科での手術となりますが、困難な場合は引き続き呼吸器内科で治療を行います。 特定の遺伝子型が腫瘍細胞から認められた場合は、分子標的薬、そうでない場合は抗癌剤で加療しますが、根治は現在のレベルでは困難で、いかに延命を図るか、症状による日常生活の低下をいかに防止するかが目標となります。 抗がん剤は多くの種類があり、ある薬が効果が見られなくなった場合は他の薬に変更して治療を継続しますが、いずれ効果がなくなった場合は症状の軽減を目的に麻薬などによる緩和療法に移行することとなります。 抗がん剤は種々の副作用がありますが、現在ではそれに対する薬剤の進歩もあり、かなりの方でそれほどの苦痛なく実施できますので、怖がらずよく相談のうえ積極的に行うことをおすすめします。 また、状況により外来で通院抗がん剤療法も可能である場合もあり、仕事を継続しながらも可能な場合があります。 近年高齢の方の肺癌も増えてきていますが、治療可能な場合も多くあるので、あきらめず相談しましょう。 ただし、老衰などで体力の低下が著しい場合やご本人の理解や意志決定が困難な場合は積極的治療は延命につながらない場合も多く、最初から緩和療法となる場合もあります。


肺真菌症

真菌(カビ)を吸い込むことによって肺に発病する病気です。真菌は空気などの環境中に存在しており、通常、健康な人には深在性真菌症が起こることはまれです。特に高齢者や免疫抑制剤の治療中などの免疫が低下した人で病気の原因となることがあります。急激に症状が進行する場合と緩やかな経過をとる場合があり、発熱、たん、血痰、呼吸困難、全身倦怠感などの症状がおこりえます。画像検査、たんの検査、血液検査で診断がつく場合もありますが、気管支鏡検査が必要となることもあります。場合によっては手術でようやく診断がつく場合もあります。治療は、真菌の種類によりますが、点滴や内服による抗真菌薬や菌の塊がある部位を切除する手術療法があります。当院では専門医師による内科的診断、薬剤治療や手術による外科的診断と治療も可能です。


非結核性抗酸菌症

非結核性肺抗酸菌症は結核菌以外の抗酸菌による感染症で、土や水などの環境中に存在する菌です。結核菌とは異なり人から人には感染しない上に、普通の免疫状態では進行は緩徐であることが多いです。また、中高年の女性に多い傾向があります。この病気は初期では無症状のことが多いですが、進行すると呼吸器の症状としてせき、たん、血痰、息切れなどや、全身症状として発熱、体重減少などが出現します。検査では、胸部エックス線画像や胸部CT、また、たんの中の菌培養を行いますが、場合によっては気管支鏡を行い、分泌物の採取を行うこともあります。菌培養では結果が出るまでに数週間かかることもあります。非結核性肺抗酸菌症と診断されるとその菌種にもよりますが、症状や肺の影が悪化してくる場合には数種類の内服治療を行います。少なくとも1年~2年ほど飲む必要があり、薬の効きにくい方もいます。このため高齢者などでは、対症療法のみを行う場合もあります。菌が完全に消えることは稀であり、治療終了後も定期的に画像検査を行うことが多いです。当院ではたん検査や画像検査に加え、専門医師による気管支鏡検査も可能です。心配な方は呼吸器内科にご相談下さい。


慢性閉塞性肺疾患

COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease) タバコの煙を主とする有害物質を長期に吸入したことが原因で喫煙者の15-20%がCOPDを発症します。煙草の煙・有害物質を吸入することで空気の通り道である気管(特にもともと細い気管)が炎症を起こして狭くなったり、肺胞(気管の末端にある酸素が取り込まれる場所)が壊れて空気が吹きだまったりして呼吸の効率が悪くなる病気です。残念なことに一度悪くなった状態から自然に改善することはまずないのがこの病気の特徴です。その結果として、始めは咳や痰や運動時の呼吸困難感が出現しますが進行すると少し動いただけでも息切れがして普通の生活が送れなくなることがあります。一般的にこの疾患は進行性でゆっくり破壊されるため本人が気づいたころには重症化していることもあります。また、一過性に気管支喘息のように気管が収縮して発作的な呼吸困難が誘発されたり、風邪をひいたことにより急激に状態が悪化してしまうこともあります。 COPDの有病率は日本人の40歳以上の8.6%・530万人おり、喫煙(過去・現在も含めて)者で12% 非喫煙者で4.7%と推定されていますが、診断されている人は一部であるといわれています。COPDによる死亡者数は年々増加しており2013年では16443人で死因全体の第9位にあります。COPDは肺炎・心不全を合併するためCOPDが影響する死亡は実際にはもっと多数あるのではないかと考えることができると思われます。 COPDの診断は多くは症状や胸部の写真の異常から疑われ、最終的には呼吸機能検査で診断を行います。呼吸機能検査の結果から重症度も診断されその重症度に従い治療法が選択されます。さらに、COPDは全身性炎症、骨格筋の機能障害、栄養障害、骨粗鬆症、糖尿病、心血管疾患などを併発することからからそれらの疾患の評価も必要になります。  治療法は重症度により段階的に治療を追加していきます。すべての段階において原因の一つである喫煙などの危険因子の回避や感染対策としてインフルエンザ・肺炎球菌ワクチンを検討していきます。軽症では症状の出現時に短時間作用型の気管支拡張剤の吸入を行い、中等症以上になると一つまたは複数の長期作用型気管支拡張薬の吸入・内服や呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸訓練、運動療法、栄養療法など)を定期的に行います。重症で急性増悪を繰り返すようになると上記に加えて吸入ステロイドの使用を検討します。また、病気が進行して空気中の酸素濃度では低酸素状態を起こすようになると在宅酸素療法といった日常的に酸素を吸い続けるようになり、それ以上に悪化すると人工呼吸器の対象になるかの検討がされることとなります。さらに一定の基準を満たす方には外科的治療や肺移植の必要となることがあります。  COPDの診断を受けた方は日常生活において風邪の予防・禁煙・体調管理をしていくことが重要でそれでも普段より呼吸困難感が強くなった時、風邪をひいたとき、咳や痰が増えた時、動悸・むくみが出現したときにはかかりつけ医に受診をすることが大切です。


喘息

日本では喘息の患者さんは増えており、最近では400万人を超えています。 喘息とは、気道(気管支などの空気の通り道)が炎症によって狭くなる病気です。また、喘息の人の気道はとても敏感になっているため、冷たい空気やタバコなどのわずかな刺激でも気道が狭くなってヒューヒューゼーゼーいったり息苦しくなって発作が起きてしまうこともあります。 喘息の治療には、直接的に気道の炎症を抑えるため吸入ステロイド薬がよく使われますが、喘息の人の気道の炎症は発作や症状がないときでもずっと続いているので継続的な治療が重要です。症状がなくなったからといって、炎症を放っておくと気道が狭くなったまま元に戻らなくなったり、将来喘息のコントロールがより難しくなってしまったりします。 当院では、呼吸機能検査、気道過敏性検査、呼気一酸化窒素濃度検査、喀痰検査、血液検査、胸部レントゲン検査などを行い、聴診や問診とあわせて、喘息の診断や状態評価をより早くより適切に進めることを重視しています。 早期の治療開始と治療の継続により、良好な喘息のコントロールを図り、健康な人と変わらない生活を送れることを目標としています。

 

 

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