HOME › 新型インフルエンザ等発生時における行動(診療継続)計画

新型インフルエンザ等発生時における行動(診療継続)計画


病原性の高い新型インフルエンザ等が発生した時、病院職員本人あるいは家族等が罹患したり、休校・休園措置等により勤務が困難となる場合が想定される。そのような場合でも、医療機関として急激に増加する新型インフルエンザ等の患者への対応と、定期通院患者への対応が継続できるよう、事前に対応策を準備しておくことが重要である。患者数がピークを迎えるまん延期でも当院が診療を継続できるようにするために、当院としての診療継続計画を次のように定める。

 

第I章  総 論

Ⅰ-1  基本方針

Ⅰ-1-1

当院の役割
当院は「帰国者・接触者外来」を設置する感染症指定医療機関である 。

1) 新型インフルエンザ等流行時および発生時において、中濃圏域における急性期医療を 担う当院の役割を踏まえ、地域住民に対し必要な医療の提供を行う。この目的達成のため「診療継続計画」を作成し、必要な対策を実施する。
2) 海外発生期及び地域発生早期に、「帰国者・接触者外来」を設置し、新型インフルエンザ等の発生国からの帰国者や患者との濃厚接触者に対する外来診療を行う。
3) 感染症指定医療機関として、地域発生早期に新型インフルエンザ等の疑似症患者・確定患者に対する入院診療を行う。
4)

診療の継続には、診療に従事する当院の職員の安全と健康を護り、感染予防に努めることが極めて重要である。

Ⅰ-1-2  各発生段階における基本的な対応方針
1) 「海外発生期から地域発生早期」における医療体制
「海外発生期から地域発生早期」(各都道府県で新型インフルエンザ等の患者が発生していないか、患者は発生しているが全ての患者の接触歴を追える状態)においては、発生国からの帰国者や患者との濃厚接触者が発熱・呼吸器症状等を有する場合は、「帰国者・接触者相談センター」を通じて、「帰国者・接触者外来」において外来診療を行う。診療の結果、新型インフルエンザ等と診断された場合は、感染症法に基づき感染症指定医療機関等に移送し、入院診療を行う(このフェーズでは「帰国者・接触者外来」における外来診療と「感染症指定医療機関等」における入院診療が原則となる)。
2) 「地域感染期」における医療体制
「地域感染期」(各都道府県で新型インフルエンザ等の患者の接触歴が疫学的に追えなくなった状態)には中濃圏域住民のため、新型インフルエンザ等の患者の外来・入院診療を行いながら、当院の診療機能の維持に努め、地域医療を担う医療機関としての役割と責任を果たす。
Ⅰ-1-3  優先診療業務
地域における当院の役割と機能を鑑み、地域感染期においても診療が必要な患者への医療提供を継続するため当院の診療業務を優先度に応じて、A群、B群、C群の3群に分類し、患者の急増や欠勤者が多くなった場合に優先度の低いものから縮小し、必要な医療に振り当てる。
A群 <高い>:地域感染期でも通常時と同様に継続すべき診療業務
B群<中等度>:地域感染期には一定期間またはある程度の規模であれば縮小できる業務
C群 <低い>:地域感染期には緊急の場合を除き延期できる診療業務
Ⅰ-2  本診療継続計画の策定
1) 院内に「新型インフルエンザ等に関する院内対策会議」(以下「対策会議」という)を設置し、本計画を作成する。
2) 対策会議の議長は院長とし、構成員は副院長、看護部長、事務局長、医療安全管理者、感染管理対策室コアメンバー、呼吸器内科部長、薬局長、臨床検査技師長とする。
3) 海外発生期以降は、 最新の科学的根拠と関市の医療継続計画に基づく当院の役割分担を元に、対策会議で適宜本計画を変更する。
4) 対策会議は研修会等の企画・実施を通じて職員に本計画を周知徹底する。
Ⅰ-3  意思決定体制
Ⅰ-4  意思決定に必要な 新情報の収集・共有化
1) 情報収集部門の設置:総務課が担当する。
2) 情報入手先のリスト作成:内閣官房・新型インフルエンザ等対策担当、各都道府県・新型インフルエンザ等対策担当、国立感染症研究所感染症疫学センターなど(リストを別紙として添付)。
3) 情報の周知:収集した情報は速やかに職員に周知する。

 

第II章  未発生期における準備

当院における新型インフルエンザ等対策の立案・実施に関しては以下のとおりとする。

1)

未発生期においては院内感染対策委員会により、新型インフルエンザ等対策の立案及び院内感染対策の強化を図る。

2) 未発生における対策立案は、感染制御チーム(Infection Control Team:ICT)が行うこととするが、必要に応じ、新型インフルエンザ等対策ワーキンググループを別途設置する。
3) 発生期においては、新型インフルエンザ等対策本部を設置し、新型インフルエンザ等対策を実施する。
Ⅱ-1  新型インフルエンザ等発生時の診療体制確保の準備
1) 院内感染対策マニュアルに基づき平時から院内感染対策を徹底するとともに、新型インフルエンザ等発生時における「診療継続計画」を策定し、職員間で情報共有し、事前訓練を実施する。
2) 優先診療業務を確認・決定する。
3) 診療に確保できる人員と対応能力の評価:新型インフルエンザ等発生時の優先診療業務方針に基づき、可能な範囲で以下の項目について職員数の見積もりを行う。
λ 新型インフルエンザ等の診療が可能な医師数
λ 人工呼吸器管理のできる職員数
λ トリアージの教育を受けた職員数(看護職・事務職数等)
λ 入院可能病床数と人工呼吸器の稼働状況管理(臨床工学技士)
4) 連絡体制:緊急時の連絡網などを整備する。
  Ⅱ-1-1  マニュアル等の整備
1) 院長は、病院が特定接種の登録事業者になるため所定の手続きを行い、厚生労働省に 登録する。
2) 感染対策マニュアルの整備・確認を行う。
3) 新型インフルエンザ等発生時における診療継続計画(本計画)の策定・検討及び改訂を行う。
4) 本計画に基づき、各部署において、業務継続計画及び必要な手順書等の策定・検討及び改訂 を行う。
5) 職員への最新マニュアルの情報提供と業務の周知 を行う。
6) 新型インフルエンザ等患者(疑いを含む)診療時の対応方針(PCR 検査の実施の要否等)に関し、関保健所と調整を行う。
7) 職員及び来院者、入院患者等を守るため、平時から外来・入院における感染対策を徹底しておく。
8) 感染対策のための個人防護具の正しい着脱法等に習熟しておく。
Ⅱ-1-2  訓練の実施
1) 岐阜県及び岐阜市主催の訓練への参加を行う。
2) 主要職員を対象とした机上・実施訓練を実施する。
Ⅱ-1-3 特定接種
1)

特定接種の登録について
特定接種の登録に関して、行政機関から示される申請手続きに基づき、登録事業者と して登録を行う。

Ⅱ-2  職員の健康管理と啓発
新型インフルエンザ等発生時における職員の健康管理及び職員の意識向上に必要な措 置を行う。
Ⅱ-2-1  教育と研修
新型インフルエンザ等発生時においても適切な診療を提供できるよう、以下の教育及び研修を実施する。
1) 新型インフルエンザ等に関する基礎知識について
2) 発生段階に応じた新型インフルエンザ等患者に対する診療体制について
3) 院内感染対策、個人防護具の適切な使用法、職員の健康管理について
4) 部署別の業務継続計画(人員計画、優先業務の把握)について
Ⅱ-3  病院機能の維持及び業務継続
Ⅱ-3-1  診療継続計画(外来)
地域感染期において外来診療が必要な患者への医療提供を継続するための計画を策定する。
1) 地域感染期において新型インフルエンザ等の患者数が大幅に増加し、新型インフルエンザ等対策本部長(院長)が外来診療を制限する必要性があると判断した場合は、外来診療を段階的に縮小する。
2) 新型インフルエンザ等対策本部長より各診療科長宛に外来診療縮小の依頼を発出する。具体的には、以下の対応を行う。
λ 慢性疾患等を有する定期受診患者のうち、病状が比較的安定している患者に対して長期処方を行うなど受診する回数を減らす。
λ 慢性疾患等を有する定期受診患者のうち、電話による診療により慢性疾患の状況について診断できた場合に定期処方薬の処方箋をファクシミリ等で送付する。
λ 症状がない段階で同意を得た定期受診患者や再診患者に対して、電話による診療により新型インフルエンザ等への感染の診断ができた場合に抗インフルエンザウイルス薬等の処方箋をファクシミリ等で送付する。
λ 緊急以外の外来受診は避けるよう広報を行う。
Ⅱ-3-2  診療継続計画(入院)
地域感染期において入院診療が必要な患者への医療提供を継続するため状況により待機的入院・手術の制限、退院勧奨などの対応を検討しておく。
1) 地域感染期において新型インフルエンザ等の患者数が大幅に増加し、新型インフルエンザ等の重症患者のための病床を確保するため、新型インフルエンザ等対策本部長が入院診療を制限する必要性があると判断した場合は、入院診療を段階的に縮小する。
2) 未発生期の段階において、地域感染期に待機的入院・待機的手術を控える必要が生じた場合に入院診療を制限するための計画を策定する。具体的には、各診療科における代表的疾患・病態を以下の基準をもとに A 群、B 群、C 群の3群にグループ分けを行う。
A 群の疾患・病態: 早急な措置を要する患者
B 群の疾病・病態: A 群と C 群の中間の患者
C 群の疾病・病態: 予定入院、予定手術で1ヶ月程度の猶予がある患者
Ⅱ-3-3  臨時職員の募集・採用
欠勤率が30%*を越えた場合の対応として臨時職員を以下のとおり募集する。募集する人数については、臨時職員への研修が可能な範囲内とし、勤務可能な職員数を定期的に把握した上で臨時職員の募集を行うこととする。
なお、医師・看護師等の有資格者の募集(他の医療機関への協力要請)については、岐阜県と調整の上、実施することとする。
Ⅱ-4  医療器材の確保
備蓄物資をリスト化し計画的に備蓄する(個人防護具等、医薬品・検査試薬等、医療機器等の確保と確認)。
1) 管理課は、災害用に備蓄している医療資材(高性能感染防護具セット、外科用マスク・ガウン・手袋・手指消毒剤・手指洗浄剤・簡易ベッド等)や非常食(患者用・職員用)等を確認し、新型インフルエンザ等対策で共用できる物資をリスト化しておく。新型インフルエンザ等が発生したとき必要となる感染対策用品のリストを作成する。これらを計画的に備蓄する。
2) 薬局長は、医薬品・医療資材取り扱い業者と連携し、新型インフルエンザ等発生時の必須医薬品(抗インフルエンザウイルス薬、抗菌薬等)リストを作成し、その備蓄を計画的に開始する 。
3) 臨床検査技師長は、検査試薬等取り扱い業者と連携し、新型インフルエンザ等発生時のインフルエンザ迅速診断キットを計画的に備蓄する。
4) 臨床工学技士主査は、平時から医療機器・輸液ポンプ・シリンジポンプ ・人工呼吸器 ・血液浄化装置 ・心肺補助装置 の稼働状況を確認しておく。
Ⅱ-5  施設利用者の安全と広報
発生段階に対応した施設利用者への啓発・広報活動を計画しておく。
Ⅱ-5-1  未発生期
1) 手洗い・咳エチケットなどの感染対策について、ポスターなどにより啓発を行う。
Ⅱ-5-2  海外発生期及び国内発生早期
1) 手洗い・咳エチケットなどの感染対策について、ポスターなどにより啓発を行う。
2) 新型インフルエンザ等の流行状況及び診療に関する当院での対応方針につき、ポスターやホームページなどで情報提供を行う。
Ⅱ-5-3  国内感染期
1) 手洗い・咳エチケットなどの感染対策について、ポスターなどにより啓発を行う。
2) 新型インフルエンザ等の流行状況及び診療に関する当院での対応方針につき、ポスターやホームページなどで情報提供を行う。
3) 面会に関する当院の方針につき、ポスターやホームページなどで情報提供を行う。


第III章 情報収集と周知

新型インフルエンザ等に関する情報について、国や厚生労働省の通知等や各種のホームページ情報を基に、当該疾患の診療に関する最新情報や地域での発生・流行情報、地域の休校状況などを含めて迅速に把握する。
情報収集責任者はICC委員長とし、ICT及び事務部門から専任の担当者を配置する。
収集した情報は、院内LANの活用、文書の配布により速やかに職員に通知するともに、何らかの対策行動が必要な点については各所属長を通じ職員に周知する。
当院に通院中の患者、地域住民に対しては当院のホームページや、当院の玄関、院内掲示板等を通じて情報提供する。


第IV章  海外発生期から地域発生早期

新型インフルエンザ等が海外で発生又は岐阜県において発生しているが全ての患者の接触歴が追える時期である。発生国からの帰国者や患者との濃厚接触者に対しては、「帰国者・接触者相談センター」を通じて、「帰国者・接触者外来」において外来診療を行う。診察の結果、新型インフルエンザ等と診断された場合は、感染症法に基づき感染症指定医療機関等において入院措置を行うこととなる。

Ⅳ-1 

外来診療体制
当院は「帰国者・接触者外来」を設置する医療機関である。
新型インフルエンザ等が発生した時点で、「帰国者・接触者外来」を設置し、新型インフルエンザ等が疑われる患者に対する外来診療を開始する。その他の外来診療は通常体制とする。

Ⅳ-2  入院診療体制
当院又は他院の「帰国者・接触者外来」において新型インフルエンザ等と診断された患者の入院診療を行う。その他の入院診療は通常どおりとする。

 

第Ⅴ章 地域感染期(患者が大幅に増加した場合を含む)

岐阜県において新型インフルエンザ等の患者が発生し接触歴が疫学的に追えなくなった時期である。新型インフルエンザ等の初診患者の診療を原則行わない医療機関を除き、一般の医療機関において、新型インフルエンザ等患者の診療を行うこととなり、入院治療は重症患者を対象とし、それ以外の患者に対しては在宅療養を行うこととなる。
患者数が大幅に増加した場合、自宅で治療が可能な入院中の患者については、病状を説明した上で退院を促し、新型インフルエンザ等の重症患者のための病床を確保する必要がある。 通常の院内感染対策に加え、新型インフルエンザ等の患者とその他の患者とを可能な限り時間的・空間的に分離する等の対策を行う。
重要診療(救急診療・透析診療・緊急入院等)については通常通りの診療を維持する。

Ⅴ-1 

外来診療体制
地域感染期に至った場合、「帰国者・接触者外来」を中止し、通常の感染症診療の延長線上で新型インフルエンザ等患者に対する外来診療を行う。患者数が大幅に増加するまでの間は、その他の外来診療は通常体制とする。

Ⅴ-2 

入院診療体制
当院または他病院において、入院治療が必要な新型インフルエンザ等患者に対し入院診療を行う。その他の入院診療は通常どおりとする。

第Ⅵ章 患者数が大幅に増加した場合の対応

地域感染期において、患者数の大幅増加及び勤務可能な職員数の減少により、診療制限をする必要性が生じた場合は、事前の計画に基づき、段階的に外来診療・入院診療の制限を開始する。また、各部署は、事前に策定した業務継続計画に基づき、職員の減少に応じた対応をとる。
必要に応じ、臨時職員を募集する。また、他の医療機関への応援体制も検討する。

Ⅵ-1 

外来診療体制
地域感染期において、新型インフルエンザ等の患者数が大幅に増加した場合は、対策本部長の指示に基づき、外来診療を段階的に縮小する。

  Ⅵ-1-1 広報
緊急以外の外来受診は避けるようホームページ、ポスター掲示等で広報を行う。
外来診療制限を行っている旨、ホームページ、ポスター掲示等で広報を行う。 ・外来診療制限を行っている旨、ホームページ、ポスター掲示等で広報を行う。
Ⅵ-2 

入院診療体制
地域感染期において、新型インフルエンザ等の患者数が大幅に増加した場合は、新型インフルエンザ等の重症患者及びその他入院診療が必要な緊急性の高い患者のための病床を確保するため、対策本部長の指示に基づき、段階的に待機的入院・待機的手術を控える。

  Ⅵ-2-1 入院診療体制について
入院対象となる患者の変更、職員の欠勤状況に応じ、入院担当医を再調整する。
必要に応じ、新型インフルエンザ等患者の入院診療を行うチームを編成する。
  Ⅵ-2-2 広報
・入院診療制限を行っている旨、ホームページ、ポスター掲示等で広報を行う。
Ⅵ-3   各部門における対応
未発生期及び海外発生期以降検討した業務継続計画に基づき、優先業務を継続できるよう業務量の調整、人員配置を行う。
Ⅵ-4 

地域全体での医療体制の確保について
地域感染期において、患者数の大幅増加及び勤務可能な職員数の減少により、診療制限をする必要性が生じる事態においては、一医療機関での対応は困難となる。
地域全体で医療体制が構築されるよう、岐阜県、中濃医療圏での協議の中で、当院の役割を確認する。

 

Ⅵ-4-1 病床の確保について

既存の病床が満床となった場合でも、岐阜県の要請により、さらに新型インフルエンザ等の患者の入院の受け入れ要請があった場合には、空床のある病棟を臨時の病室とする。
その際は、臨時の医療チームを構成する。また、不足する医療従事者の派遣を岐阜県に要請する。

  Ⅵ-4-2 医療従事者の確保について
他医療機関や岐阜県が設置する臨時の医療施設への応援要請があった場合、対策本部長は、各部署の長に対し、応需可能か確認する。
住民に対する予防接種のため関市が実施する予防接種への応援要請があった場合、対策本部長は、各部署の長に対し、応需可能か確認する。

平成26年2月28日 策定

 

このページの先頭へ