関節リウマチ

 関節リウマチは古代ギリシャの医者ヒポクラテスがいた紀元前4~5世紀からあったと言われています。
 フランスの印象派の画家であるピエール=オーギュスト ルノアール(1841-1919)が有名です。69歳で車椅子となり、一時はもう絵が描けないと絶望しましたが、絵筆を包帯で手にくくりつけ、78歳で亡くなるまで、絵を描き続けたといわれています。
 関節リウマチの語源は、「ロイマ(rheuma)=流れ」というギリシャ語から きています。リウマチの関節痛が、ちょうど水が流れるようにあちこちと移り 変わるために、こう呼ばれたといわれています。
関節リウマチとは、自己の免疫が主に手足の関節を侵し、関節痛や関節の変形が生じる代表的な膠原病の一つである炎症性自己免疫疾患です。
 関節リウマチの有病率は0.5~0.8%程度で、日本では70万人の患者がいて、その80%以上が女性で.特に40歳代に手足の関節の腫れと痛みで発症.手のこわばりや手指などの関節痛が主な症状です。
関節リウマチは不治の病と言われていて 従来のリウマチ薬では炎症や痛みを抑える対症療法でしかなく、病気の進行を止めることができませんでした。徐々に骨破壊が進行. 車椅子や寝たきりとなっていました。
 ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授元は整形外科医手術が下手で、「じゃま中」と呼ばれていたためか基礎研究にすすんで、iPS細胞を発明しました。その山中教授が、「ぼくが唯一治せなかった病気があり、それは関節リウマチ」と言っていたほどです。
しかしながら、関節リウマチ薬物療法の革命がおきました。1999年にリウマトレックスが関節リウマチの治療薬に承認され、2003年には生物学的製剤であるレミケードが登場して関節リウマチは治療可能な病気となりました。
 RA治療における中心となる薬がリウマトレックスです。関節破壊を抑止する薬としてほぼ第一選択として用いられ、世界的に今日の関節リウマチ治療の基幹薬となっています。重篤な副作用としては骨髄抑制と間質性肺炎があります。まず1週間あたり6~8mgで開始して、4〜8 週間経過しても効果が不十分であれば16mg/週まで増量が可能となりました。
 リウマトレックスでも治療効果が得られない場合には生物学的製剤が使用されます。病気の主犯であるサイトカインであるTNFやIL‐6を標的とした生物学的製剤は、画期的な効果をもたらします。これらの抗サイトカイン療法は、体内で活性化されたリンパ球などを直接抑え込みます。  
これらの抗サイトカイン療法は、抗リウマチ薬であるメトトレキサートと併用すると、半分近くの人は痛みもはれもなくなり、また、炎症反応などの検査成績も正常化します。また、関節の破壊の進行がほぼ完全に抑え込まれ、早いうちから使用すれば身体機能が回復して、普通の人と同じように日常生活が送れるまでに改善します。
 一方、これらの新しい治療薬にも副作用があります。しかし、これまでの膨大な報告に基づいて作成された治療指針に沿って適正に使用すれば、深刻な問題はほとんどなりません。副作用を的確に管理することができる医師や施設で治療することが大事です。 現在8種類の生物的製剤と、1種類のJAK阻害剤があります。
抗TNF抗体製剤
① レミケード 8週間隔での点滴
② ヒュミラ 2週間に一度の皮下注射
③ シンポニー 4週間に一回の皮下注射
④ シムジア 2週間に1回の皮下注射
⑤ インフリキマブBS レミケードの後発品
TNF受容体製剤
⑥ エンブレル 週1回もしくは週2回の皮下注射
抗IL6受容体抗体
⑦ アクテムラ 4週間隔での点滴または2週間に1回の皮下注射
T細胞選択的共刺激調節剤
⑧ オレンシア 4週間隔での点滴または週1回の皮下注射
JAK阻害剤
⑨ ゼルヤンツ 内服約
以上の製剤の特徴と患者さんのRAの活動性や合併症の有無などを考慮して、日本リウマチ学会指導医を中心に関節破壊の抑制と寛解を目指した治療を行っています。
活動性の強いRAに対しては抗TNF製剤を用いた治療を行います。 生物学的製剤の休薬エビデンスのある製剤を中心に治療しています。
MTXが内服できない症例や抗TNF抗体製剤の一次無効の症例には単剤投与でも効果がある抗体IL6受容体抗体であるアクテムラを用いています。
高齢者や合併症の多い患者さんには全例調査で副作用が最も少ないオレンシアを中心に治療を行っています。
生物学的製剤でもなかなか治療に難渋する患者さんにはゼルヤンツを使用しています。