人工股関節置換術

股関節は球形の大腿骨骨頭と骨盤側で受け皿となる臼蓋との組み合わせで出来た球関節です。
股関節疾患により股関節の可動域制限、疹痛や歩行障害を生じます。

原因となる疾患には以下のものがあります。
変形性股関節症
日本人の女性に多い先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全から、加齢に伴う退行性変化によって軟骨が磨耗し、次第に関節は変形し日常生活動作の障害を生じます。


大腿骨頭壊死症

大腿骨頭の一部が壊死する疾患です。体重によって圧潰し強い痛みを生じます。

関節リウマチ
勝原病に含まれる代表的な病気の一つで、大関節にも関節破壊をおこします。
症状として、股関節痛、運動痛などで変性が進行するにつれ痛みは持続性となり安静時や夜間痛も現れます。
当院では保存療法で症状の改善が得られず日常生活に支障をきたしている場合には手術療法として人工股関節置換術を行っています。

人工股関節置換術
骨親和性の高いチタン合金製のカップとステムを骨盤側と大腿骨側に固定し、関節面には磨耗の少ない素材を使います。
1990年代後半、小切開による人工股関節置換術が報告されて以来、整形外科領域において最小侵襲手術が行われるようになってきました。以前のMIS THAは小切開つまり皮膚切開の長さが短いかどうかが論じられてきましたが、現在の最小侵襲手術は股関節周辺の筋組織を可能な限り温存する筋温存へと異なる進化を遂げています。現在当院で行っている最小侵襲手術であるAL Supine Approach(仰臥位前側方アプローチ)について説明します。

従来の手術
人工股関節置換術には数個のアプローチがあります。それらのうち最もよく行われているのが後方アプローチです。後方アプローチを用いた人工股関節置換術は昔からひろく馴れ親しまれている手技であることもあって比較的容易に手術ができるという利点がありますが、その反面後方の筋肉を多くきって進入することで、どうしても股関節後方脱臼の合併のリスクがつきまといます。それに対して現在当院でほぼ全例の人工股関節置換術に対して行っている仰臥位前側方アプローチでは手技的に難易度は上がりますが、皮膚切開の長さも平均8cm程度とかなり短いばかりではなく筋肉を全く切らずに行う手術であることから、手術後麻酔から回復したらすぐに疼痛もなく車椅子に乗ることができ術後1日目から全荷重歩行も開始することができるため2週間ほどの早期退院も可能となります。また後方アプローチの弱点であった脱臼のリスクもAL Supine Approach(仰臥位前側方アプローチ)ではほとんどありません。
MIS (Minimally Invasive Surgery)
皮膚切開を10crp 以下の最小限度の長さで行うものです。股関節周囲の筋肉をほとんど切離せずに人工関節術が可能となっています。手術後の回復、歩行、社会復帰も飛躍的に向上しました。


当院でのMISTHA (筋健温存仰臥位前外側アプローチ)
当院では最小侵襲手術であるAL Supine Approach(仰臥位前側方アプローチ)で筋肉を切らずに手術を行っています
他院でも一部行われていますが実際には多くが大腿骨の操作にあたり一部大腿骨頚部に付着している筋肉(短外旋筋群)を一部剥離して手術しているのが現状です。その筋肉は股関節の安定化に大きく関与しているため、当院ではそれらの筋肉を含め完全に筋温存する手術を行っています。筋肉を切らずに手術を行うことにより術後の疼痛はかなり軽減され早期に歩行が可能となり早期退院が可能です。また筋肉を切らないことでTHAの合併症の一つである脱臼のリスクはほとんどなくなります。



さらに大腿骨側の手技においても低侵襲かつ骨温存を目指して手術を行っています。
大腿骨骨温存のため短くて薄いステムを用い、また近位部で、の荷重を再現して生理的な荷重伝達を可能とします。
関節面に使用するポリエチレンも東京大学と京セラが開発した摩耗が起こりにくい素材を使用することで人工関節の耐久年数を延ばすことができます。



もし適応となります患者さんがみえましたら、専門外来を開いていますので当院を受診していただければ幸いです。
http://www.kansetsu-itai.com/doctor/doc112.php